法令・規則

50人未満事業場のストレスチェック義務化|中小企業の準備

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#ストレスチェック#50人未満#メンタルヘルス#中小企業#産業保健#労働安全衛生法#法令改正#2028年義務化

ストレスチェック制度は2015年12月から労働者50人以上の事業場に義務づけられてきた。50人未満の事業場は「当分の間、努力義務」として除外されてきたが、2025年5月14日公布の改正労働安全衛生法でその附則が削除され、義務化が決定した。施行日は政令で定められるが、2026年5月の労働政策審議会安全衛生分科会において2028年4月1日とする方向が示された。最初のチェック完了期限は2029年3月31日となる見通しである(いずれも執筆時点の情報であり、政令公布により確定する)。

日本の事業場の9割超を占める50人未満の中小企業にとって、実施者の確保・運用体制の構築はゼロからのスタートとなる。余裕を持った準備が不可欠だ。2026〜2027年の安全衛生法改正の全体像は2026-2027 安全衛生法改正 完全ガイドで解説している。

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ストレスチェック制度とは

ストレスチェックとは、労働者が自分のストレス状態を知るための調査票を用いた検査制度である。事業者が労働者のメンタルヘルス不調を未然に防ぐことを主な目的とし、労働安全衛生法第66条の10に規定される。

制度の目的と位置づけ

目的内容
一次予防高ストレス状態を早期に本人が認識し、自ら行動変容・相談を促す
職場環境改善集団分析結果をもとに職場全体のストレス要因を特定・改善する
二次予防支援高ストレス者が医師による面接指導を受けやすくする仕組みを設ける

制度の核心は「事業者が結果を知る検査」ではなく「労働者本人が自覚する機会」である。個人結果は原則として労働者本人に通知され、本人の同意なく事業者が把握することは禁止されている。

現行の義務対象と50人未満の位置づけ

2015年12月以来、常時50人以上の労働者を使用する事業場に年1回の実施が義務づけられてきた。50人未満は努力義務にとどまっていたため、実施率は2023年度時点で50人以上が93.9%に対し、50人未満では32.8%程度にとどまる(厚生労働省調べ)。義務化によってこの格差を解消し、小規模事業場の労働者のメンタルヘルス保護を実現するのが今回の改正の趣旨だ。


50人未満への義務化:法改正のポイント

改正の経緯

年月事項
2015年12月ストレスチェック義務化施行(50人以上。50人未満は附則で当分の間・努力義務)
2025年5月14日改正労働安全衛生法公布。附則を削除し、50人未満への義務拡大を明記
2026年5月(審議会)労働政策審議会安全衛生分科会にて施行日2028年4月1日の方向を提示
2028年4月1日(予定)施行。50人未満事業場にも年1回のストレスチェック実施義務が発生
2029年3月31日(予定)最初のチェック完了期限(初年度は1年間の猶予を想定)

免責事項(重要): 本記事は一般的な参考情報の提供を目的としており、法的・専門的な助言を提供するものではありません。施行日・罰則・詳細要件は政令・省令により確定するため、必ず所轄の労働基準監督署、産業医、または社会保険労務士にご確認ください。記載内容は執筆時点(2026年6月)の情報に基づきます。

義務の内容

現行の50人以上と同等の義務が課される方向であるが、小規模事業場の実情を踏まえた配慮措置が設けられる見込みである。確定内容については政令・省令の公布を待つ必要がある。現時点で義務化が確実な事項を整理する。

義務項目概要
年1回のストレスチェック実施常時使用するすべての労働者を対象に実施
結果の本人通知実施者(医師・保健師等)が直接労働者に通知
高ストレス者への面接指導の申出案内高ストレス者に医師面接指導の機会を案内する義務
実施状況の記録・保存実施結果は5年間保存(対象・実施日・実施者名等)

50人未満が直面する課題

50人以上の事業場は産業医の選任義務があり、ストレスチェックの実施者・管理体制が整っていることが多い。50人未満にはその前提がなく、以下の課題が大きい。

課題具体的な問題
実施者がいない医師・保健師・精神保健福祉士等がいない。産業医の選任義務もない
担当者の知識不足制度の手順・記録方法・高ストレス者対応を理解している人材がいない
コスト負担外部委託費用の捻出が難しい(従業員1人あたり1,500〜3,000円程度)
高ストレス者対応医師面接指導を依頼する産業医がいない
個人情報管理結果の厳重な管理・漏洩リスクへの対応が求められる

今から進める準備:4つのステップ

施行まで約2年ある。体制をゼロから作ることを考えると、早期着手が望ましい。

ステップ1:担当者の選任と情報収集

まず社内の安全衛生担当者(衛生推進者等)を窓口に定める。ストレスチェック制度に関する厚生労働省の「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」(mhlw.go.jp)を入手し、全体像を把握することから始める。

ステップ2:産業保健総合支援センターへの相談

最寄りの**産業保健総合支援センター(産保センター)**は、都道府県ごとに設置された無料相談窓口である。実施体制の作り方、実施者の紹介ルート、記録書類の整備など、50人未満向けの具体的なアドバイスが得られる。費用はかからない。

支援内容詳細
制度の説明・相談ストレスチェックの実施手順・書類整備を無料相談
産業医の紹介地域の産業医との接続を支援
地域産業保健センター案内医師面接指導の実施先として地産保を紹介
研修・セミナー衛生推進者向けの研修を定期的に実施

産業保健総合支援センターは独立行政法人労働者健康安全機構(JOHAS)が運営しており、所在地は厚生労働省ウェブサイト(mhlw.go.jp)または「さんぽセンター」で検索できる。

ステップ3:外部委託先の選定

50人未満の多くは外部委託が現実的な選択肢となる。外部委託できる範囲は「実施事務従事者業務(配布・回収)」と「実施者業務(医師・保健師等)」の両方を含む。委託先を選ぶ際のポイントを整理する。

確認項目内容
実施者の資格医師・保健師・精神保健福祉士等の資格者が実施者として関与しているか
調査票の選択厚労省推奨の57項目版「職業性ストレス簡易調査票」に対応しているか
セキュリティ個人情報保護法・労働衛生法令に沿った情報管理体制があるか
集団分析10人以上のグループ単位での集団分析に対応しているか(任意だが有用)
費用と補助後述の助成金対応の見積もりを出してもらえるか

ステップ4:助成金の確認と申請

団体経由産業保健活動推進助成金(厚生労働省)では、中小企業がストレスチェックを外部委託する際の費用のうち、経費の90%が助成対象となる場合がある。事業主団体(業界団体・商工会議所等)を経由して申請する仕組みであるため、所属団体に問い合わせることが第一歩となる。助成金制度は年度によって変更があるため、最新情報は厚生労働省ウェブサイトで確認する。


ストレスチェックの実施フロー

実際にストレスチェックを実施する際の基本的な流れを示す。

ステップ実施者・担当内容
1.実施方針・体制の決定事業者実施方法、調査票、外部委託先、記録担当者を決定
2.労働者への説明担当者目的・流れ・個人情報の扱い・受検任意性を周知
3.調査票の配布・回収実施事務従事者紙または電子で配布。回収は実施事務従事者が行う
4.判定・結果通知実施者(医師等)高ストレス者の判定を行い、結果を直接本人へ通知
5.面接指導の申出高ストレス者(本人)本人が希望する場合、事業者に申し出る
6.医師面接指導医師申出者に対し、産業医等が面接指導を実施
7.就業上の措置事業者医師の意見を踏まえた就業配慮(残業制限等)の実施
8.集団分析・職場改善担当者・管理者10人以上のグループで集団分析を実施し、職場改善につなげる(任意)
9.記録・保存担当者実施結果の記録を5年間保存

高ストレス者への対応:もっとも重要なプロセス

ストレスチェックの結果、高ストレス者と判定された労働者への対応がこの制度の核心である。高ストレス者対応の制度詳細は高ストレス者の対応と面接指導に詳しくまとめている。

事業者が理解すべき基本原則

原則説明
結果の無断把握は禁止高ストレス者かどうかも含め、本人同意なく事業者が把握することは禁止
申出は任意面接指導の申出は本人の任意であり、強制してはならない
不利益取扱いの禁止高ストレス者であること・申出をしたことを理由とした解雇・降格等は厳禁
申出後の措置義務面接指導の申出があった場合、事業者は医師面接を実施する義務がある

50人未満の医師面接対応

50人未満では産業医がいないため、**地域産業保健センター(地産保)**が無料で医師面接指導に対応している。地産保は産業保健総合支援センターの傘下に設置されており、産保センターを通じて紹介を受けられる。産業医の選任・活用については産業医の選任義務と活用法も参照されたい。


スモールスタートのすすめ

体制整備を一度に完成させようとすると前に進まない。まず産業保健総合支援センターに電話一本入れることが、最短の第一歩になる。

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免責事項: 本記事は一般的な参考情報の提供を目的としており、法的・専門的な助言ではありません。ストレスチェック制度の詳細要件・施行日・罰則については政令・省令の確定後に所轄の労働基準監督署、産業医、または社会保険労務士にご確認ください。記載内容は執筆時点(2026年6月)の情報であり、法令改正により変更される場合があります。


よくある質問

Q. 50人未満の事業場のストレスチェック実施は本当に義務になるのか?

2025年5月14日公布の改正労働安全衛生法により、50人未満の事業場へのストレスチェック義務化は法律上確定している。施行日については2026年5月の労働政策審議会安全衛生分科会で2028年4月1日とする方向が示されたが、政令の公布をもって正式に確定する。最新の政令情報は所轄の労働基準監督署または厚生労働省ウェブサイトで確認することを推奨する。

Q. 産業医がいない場合、誰がストレスチェックの実施者になるのか?

ストレスチェックの実施者は医師・保健師・精神保健福祉士などの有資格者でなければならない。50人未満の事業場は産業医選任義務がないため、外部の医療機関・外部委託サービス・地域産業保健センターを通じて実施者を確保するのが現実的だ。産業保健総合支援センター(無料)に相談すると地域の実施者候補の紹介を受けられる。

Q. 費用はどのくらいかかるか?助成金はあるか?

外部委託費用は概ね労働者1人あたり1,500〜3,000円程度が相場であるが、サービス内容・規模によって幅がある。中小企業向けには団体経由産業保健活動推進助成金(経費の90%が対象となる場合あり)が活用できる。業界団体・商工会議所経由での申請が必要なため、所属団体に確認するとよい。制度は年度によって変更されるため、最新情報は厚生労働省ウェブサイトを参照する。

Q. 従業員が5〜10人程度の零細事業場でも義務になるのか?

現時点での改正内容は「常時使用する労働者数50人未満の事業場」を対象としており、5〜10人規模の零細事業場も含まれる方向である。ただし、政令・省令で小規模事業場向けの配慮措置が設けられる可能性もある。確定内容については政令公布後に所轄の労働基準監督署に確認されたい。

Q. ストレスチェック結果は事業者に知られてしまうのか?

結果は原則として労働者本人に直接通知される。事業者が結果を知るには本人の同意が必要であり、本人同意なしに事業者が個人結果を閲覧・把握することは禁止されている。高ストレス者であることや面接指導の申出を理由とした不利益取扱い(解雇・配置転換・昇格差別等)も違法となる。


まとめ

50人未満事業場へのストレスチェック義務化は、法律上すでに確定した事項である。施行日は2028年4月1日の方向で示されており、2029年3月31日が最初のチェック完了期限となる見通しだ(政令確定まで保守的に情報収集を続けてほしい)。

今から取り組むべき準備を整理する。

  1. 情報収集:厚生労働省「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」を入手する
  2. 担当者選任:衛生推進者等を社内窓口として決める
  3. 産保センター相談:産業保健総合支援センターに無料相談し、実施者確保の道筋をつける
  4. 外部委託先の選定:助成金対応の委託先を複数比較・検討する
  5. 助成金申請:団体経由産業保健活動推進助成金の対象を確認する
  6. 社内周知:制度の目的・プライバシー保護について全労働者に事前説明する

施行まで約2年。ゼロから体制を構築する中小企業にとって、この時間は決して長くない。まず産業保健総合支援センターへの相談から一歩踏み出してほしい。


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