KYTシート無料DL|現場ですぐ使える4ラウンド法テンプレと記入例
「KYTシート、毎日書いてはいるけど、これで合ってるんだろうか」
そう感じたことはないだろうか。書式が現場ごとにバラバラ、書く欄が足りない、対策が「注意する」で終わってしまう。気がつけば、KYTシートは”埋めるための紙”になっている。
KYT(危険予知トレーニング)は、本来であれば作業前の数分間で災害を一件減らすための強力なツールだ。問題はやり方ではなく、使っているシートの設計と運用にある。
この記事では、4ラウンド法に沿ったKYTシートの構成、エクセル/PDFテンプレートの想定、記入例3パターン、実施頻度の目安まで、現場で今日から使える形で整理した。記事末で「安全ポスト+」公式のKYTシートテンプレートも無料で配布している(記事内からダウンロードできる)。
📥 KYTシート(4ラウンド法) を無料ダウンロード(登録不要) ・Excel版(.xlsx) — 項目の追加・削除など自由に編集できます ・PDF版(.pdf) — 印刷してそのまま使えます メールアドレスの登録は不要です。社内での利用・改変も自由にどうぞ。
KYTと4ラウンド法のおさらい
KYTとは
KYTは「危険予知トレーニング(Kiken Yochi Training)」の略。作業開始前に、潜む危険をチーム全員で予測し、対策を共有するための短時間ミーティングだ。
中央労働災害防止協会(中災防)が体系化した「ゼロ災運動」の中核手法で、建設業・製造業・物流業など多くの現場で採用されている。
KY活動全般についてはKY活動とは|効果的な危険予知トレーニングの進め方で詳しく解説しているので、合わせて読んでほしい。
4ラウンド法の流れ
KYTの標準形が4ラウンド法(4R-KY)。以下の4ステップで進める。
| ラウンド | 名称 | 問い |
|---|---|---|
| 第1R | 現状把握 | どんな危険がひそんでいるか |
| 第2R | 本質追究 | これが危険のポイントだ |
| 第3R | 対策樹立 | あなたならどうする |
| 第4R | 目標設定 | 私たちはこうする |
このサイクルを回すことで、危険の洗い出し → 重点化 → 具体策 → 行動宣言まで一気通貫でできる。KYTシートはこの4ラウンドを1枚の紙に収めるための設計図だ。
KYTシートの基本構成
良いKYTシートには、必ず以下の7要素が入っている。逆にこれが揃っていないシートは、書いても残らない。
1. ヘッダー情報
- 日付/時刻
- 工事名・作業名
- 班名/リーダー名
- 参加者名(サイン欄)
- 天候・気温(屋外作業の場合)
天候欄は軽視されがちだが、夏季の熱中症リスク、冬季の凍結リスクなど、季節要因の振り返りに効く。
2. イラスト/写真欄
シートの上部、視線が最初に行く位置にA6〜A5サイズの図版スペースを確保する。
- 当日の作業状況をスケッチ
- スマホで撮影した現場写真を貼り付け
- 過去のヒヤリハット事例イラスト
言葉だけのKYTは抽象的になりがちで、危険が「概念」で終わる。図版があると「あの足場の3段目」「あのフォークの爪先」と具体化される。
3. 第1ラウンド記入欄:現状把握
「〜なので、〜になる」の形式で、思いつく限りの危険を書き出す。最低5項目、できれば8〜10項目のスペースを用意したい。
| No. | どんな危険がひそんでいるか |
|---|---|
| 1 | 足場が雨で濡れているので、滑って転落する |
| 2 | 玉掛けワイヤーに錆があるので、切断して荷が落下する |
この「〜ので、〜になる」フォーマットを守ると、原因と結果がセットになり、対策が立てやすくなる。
4. 第2ラウンド記入欄:本質追究
第1Rで挙がった危険のうち、最重要を1〜2件選び「◎」を付ける欄。
選定基準は3つ。
- 発生頻度が高いか
- 発生時の被害が重大か(重大災害/死亡につながるか)
- 本日の作業特有の危険か
「◎」を付けた項目を、第3R欄に転記する流れにすると記入漏れが防げる。
5. 第3ラウンド記入欄:対策樹立
重点危険1件につき、対策を3案以上書き出す欄を用意する。
良い対策の条件:
- 主語と動詞が明確(「誰が」「何を」する)
- 数値や位置で具体化(「2m以上」「足元から30cm」)
- 「注意する」「気をつける」は禁止ワード
6. 第4ラウンド記入欄:行動目標(チームスローガン)
最終的にチームで唱和するワンフレーズを書く欄。
- 「〜しよう」「〜ヨシ!」の呼びかけ形式
- 30文字以内
- 指差し呼称とセット
例:「昇降前、滑り止めの状態、ヨシ!」
7. 対策実施記録/振り返り欄
ここが多くの市販シートに欠けている最重要欄。
- 対策を実施したか(チェックボックス)
- 想定した危険が実際に発生したか
- 想定外の危険があったか
- 次回への申し送り
この欄があるかないかで、KYTがPDCAサイクルになるか「やったふり」で終わるかが決まる。
配布テンプレの仕様
配布中のKYTシートテンプレは、以下の仕様である。中災防「KYT基礎4ラウンド法」の進め方に沿って、そのまま現場で使える最小構成にしてある。
収録内容(Excel版 .xlsx / PDF版 .pdf の2形式)
- A4縦1枚に4ラウンドすべてが収まる設計
- 作業状況欄(イラストを描く/写真を貼る)をシート上部に配置
- 1R・2Rを1つの表に統合 — 「危険要因(〜なので)」「起こる現象(〜になる)」の2列で記入を誘導し、2Rで重要な危険に ◎ を付ける形式
- 3R対策欄は「気をつける」で終わらせないため、見出しに「誰が何をするか」と明記
- 4R は重点実施項目 → チーム行動目標の順に記入
- ヘッダーにリーダー・書記・参加者欄(4ラウンド法はリーダーと書記を決めて進める)
- 指差し唱和のチェック欄(2Rの危険のポイント/4Rのチーム行動目標の2回分)
Excel版は列幅・行数を自由に変更できる。PDF版は印刷してクリップボードに挟めばそのまま使える。
自社で拡張する場合のアイデア
配布テンプレはあえて汎用にしてある。運用が回り始めたら、次のような作り込みが有効だ。
- 業種別の項目例を追記:建設なら高所・重機・玉掛け、製造ならプレス・回転体・有機溶剤、物流ならフォークリフト・荷役、化学プラントなら配管・SDS確認など
- 月次集計シートを追加:KY実施件数と、指摘の多い危険要因の傾向を集計する
- 1R→2Rの連動:Excelの入力規則で、1Rに書いた項目を2Rのプルダウンに参照させる
ただし、こうした集計や傾向分析を紙とエクセルで続けると工数が膨らむ。そこはデジタル化のほうが向いている(後述)。
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記入例3パターン
実際にどう書けばいいのか。代表的な3シーンで記入例を示す。
パターン1:高所作業(建設業/外壁塗装)
作業内容:3階建てビル外壁の塗装作業/単管足場使用
第1R 現状把握
- 足場の手すりが一部緩んでいるので、寄りかかって転落する
- 塗料缶を足場板の上に置いているので、蹴って落下し下の通行人に当たる
- 朝の冷え込みで足場が結露しているので、足を滑らせて墜落する
- 安全帯のフックを掛け替える瞬間にので、無確保時間が発生し転落する
- 強風予報が出ているので、足場ごとあおられて作業者が振り落とされる
第2R 本質追究 → 重点危険:No.4 安全帯フック掛け替え時の無確保(◎)
第3R 対策樹立
- 2丁掛け(ダブルランヤード)を全員に支給し、片方を必ず先に掛けてから外す
- フック掛け替え位置を作業前にマーキングし、全員で共有
- 親綱を水平に1本追加張りし、移動中の連続フック掛けを可能にする
第4R 行動目標
「掛けてから外す、2丁掛け、ヨシ!」
パターン2:フォークリフト荷役(物流業/倉庫)
作業内容:トラック荷台からパレット6枚をフォークリフトで荷下ろし
第1R 現状把握
- 倉庫内が暗いので、歩行者がフォークの死角に入る
- パレットが斜めに積まれているので、荷崩れして作業者を直撃する
- 床に水濡れがあるので、フォークがスリップして急停止する
- 後進時にバックモニターが汚れているので、後方の作業者に気付かず接触する
- トラック運転手が荷台にいるので、フォーク差し込み時に挟まれる
第2R 本質追究 → 重点危険:No.5 トラック荷台での挟まれ(◎)
第3R 対策樹立
- フォーク作業開始前に運転手は必ず荷台から降り、所定の待機エリア(緑線内)に立つ
- 荷役エリアの入口にカラーコーンと「フォーク作業中・立入禁止」表示を設置
- フォーク作業者と運転手で開始前・終了時に指差し相互確認を行う
第4R 行動目標
「運転手は緑線、フォーク作業ヨシ!」
パターン3:化学物質取扱(製造業/洗浄工程)
作業内容:イソプロピルアルコール(IPA)を使った機械部品の脱脂洗浄
第1R 現状把握
- 換気扇が一部停止しているので、IPA蒸気が滞留して中毒・引火する
- 静電気が起きやすい乾燥した時期なので、火花でIPAに着火する
- ゴーグルが曇っているので、視界不良で薬液をこぼす
- 手袋に小さな穴があるので、皮膚に直接付着して皮膚障害になる
- SDS(安全データシート)が現場に掲示されていないので、緊急時に対応が遅れる
第2R 本質追究 → 重点危険:No.2 静電気着火による火災(◎)
第3R 対策樹立
- 作業前にアースバンドを作業者の手首と装置に取り付ける
- 床にスタティックマット(静電気対策マット)を敷き、湿度を40%以上に維持
- 防爆型の換気装置を作業エリア直上に設置し、IPA濃度を常時測定(簡易検知管/50ppm以下)
第4R 行動目標
「アース取って、湿度確認、IPAヨシ!」
これら3例に共通するのは、対策が「具体的な動詞+数値」で書かれている点。「気をつける」では現場で再現できない。「2m以上離れる」「湿度40%以上」と書けるところまで落とし込むのが、KYTシートの価値だ。
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KYTの実施頻度:朝礼KYT vs 週次集合KYT
「毎日やるべき?」「週1で足りる?」という質問は多い。答えは両方やる。性格が違うからだ。
毎日朝礼KYT(TBM-KY型)
- 時間:5〜10分
- 場所:作業現場の朝礼スペース
- 対象:その日その班の作業
- 目的:当日特有のリスクの洗い出しと共有
- シート:1日1枚(簡易版でOK)
毎朝の現場で、その日の天候・段取り・人員配置に応じて行う。変動要因への対応が主目的。
週次集合KYT(教育型)
- 時間:30〜60分
- 場所:会議室/教育センター
- 対象:複数班合同/部署単位
- 目的:過去事例の深掘り、4ラウンド法の練習、新人教育
- シート:A3版・グループワーク形式
過去1週間のヒヤリハット報告、他現場の災害事例、月次の重点テーマ(例:6月=梅雨期スリップ、8月=熱中症)を題材に、じっくり議論する。スキル向上と意識醸成が主目的。
月次・四半期の振り返り
加えて月1回、安全衛生委員会の場でKYT記録を集計し、
- 重点危険として挙がった件数Top5
- 想定外で発生したヒヤリハット件数
- 対策実施率
を可視化する。これがあると、KYTが経営層へのレポート資料にもなる。
マンネリ化を防ぐ7つの工夫
KYTシートを配っただけでは、3か月で形骸化する。以下の7点を運用に組み込んでほしい。
1. リーダーをローテーション
毎日同じ職長が進行すると、危険の指摘パターンが固定する。若手・中堅・ベテランで持ち回りにする。
2. イラスト・写真を必ず1枚入れる
スマホで現場を撮影してシートに添付するだけで、議論の質が変わる。前日のヒヤリハット現場の写真があるとなお良い。
3. 「禁止ワード」を決める
「注意する/気をつける/確認する」は対策欄で禁止。これらを書きたくなったら「何を、どのタイミングで、どう確認するか」を書く。
4. 他班・他社のKYTを覗き見する
月1回、他班のKYTシートをコピーして回覧する。「うちと同じ作業で、こんな危険を見つけているのか」という気付きが入る。
5. ヒヤリハット報告と必ず連動
前日のヒヤリハット報告を朝礼で1件読み上げ、それをKYTのテーマにする。実際に起きたことが題材だと、当事者意識が一気に高まる。
6. 振り返り欄を必ず埋める
作業終了後、その日のKYTシートに対して
- 想定通りに対策できたか
- 想定外の危険はあったか
を1行でいいから書く。これだけで翌日のKYTが変わる。
7. デジタル化と組み合わせる
紙のKYTシートは紛失・検索困難・集計工数大という3重苦。半年〜1年かけて段階的にデジタルへ移行する。次節で詳述する。
「安全ポスト+」のスマホ報告と連動するメリット
KYTシートを紙だけで運用していると、重要な情報が現場に閉じてしまう問題がある。
ここで「安全ポスト+」のスマホ報告と組み合わせると、KYTが現場の枠を越えて活きてくる。
連動メリット1:KYTで挙がった危険をその場で社内共有
KYTで「危険そうだ」と挙がった項目を、その場で安全ポスト+にQRコードから匿名投稿できる。1分で全社のダッシュボードに反映され、他現場の班長も翌朝のKYT準備に活用できる。
連動メリット2:AIが4M分析で自動分類
投稿された危険情報は、AIが**Man(人)/Machine(機械)/Material(材料)/Method(方法)**の4Mで自動カテゴライズ。
「フォークリフトの死角」はMachine、「SDSの未掲示」はMethod、と機械的に整理されるので、月次集計の工数がほぼゼロになる。
連動メリット3:ヒヤリハット → KYTのループが回る
朝礼KYTで「気付いた危険」を投稿 → 当日の作業で「実際に起きたヒヤリハット」も投稿 → 翌日のKYTで前日2件をレビュー、というサイクルが、紙ベースでは1週間かかるところを24時間以内で回せる。
連動メリット4:匿名性で本音が出る
紙のKYTでは班長の前で言いにくい「実は手順を省いている」「実は資格を持っていない作業者がいる」といった本音が、匿名QR投稿だと出てくる。これがKYTで議論されると、形だけの安全活動から脱却できる。
導入の流れ
- 現場入口にQRコードを掲示(無料配布あり)
- 作業者はスマホで読み取り → 1分で匿名投稿
- AIが自動で4M分析・優先度判定
- 管理者ダッシュボードでリアルタイム可視化
- 翌日のKYTにフィードバック
詳しくは 安全ポスト+ の機能紹介ページを参照してほしい。
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まとめ
KYTシートは、4ラウンド法を1枚に収める設計図だ。
- 構成要素:ヘッダー、イラスト/写真、4ラウンド記入欄、実施記録の7要素
- 記入例:高所作業/フォークリフト/化学物質の3パターンを参考に
- 実施頻度:毎日朝礼KYT(5〜10分)+週次集合KYT(30〜60分)の二段構え
- マンネリ化対策:リーダー交代、禁止ワード、ヒヤリハット連動、振り返り欄の徹底
- デジタル化:紙のKYTを安全ポスト+のスマホ報告と連動させ、24時間以内にPDCAを回す
KYTシートは”埋める紙”ではなく、“災害を1件減らすツール”。明日の朝礼から、シートの設計と運用を少し変えてみてほしい。
関連リソース
- KY活動とは|効果的な危険予知トレーニングの進め方 — 4ラウンド法の基礎と運用の全体像
- 安全ポスト+(anzenpost.com) — QR匿名報告 × AI 4M分析でKYT運用をデジタル化
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2026年5月16日公開