作業別安全

作業手袋の選び方|耐切創・耐熱・絶縁・耐薬品の種類と違い

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「とりあえず軍手」で済ませていないだろうか。作業手袋は種類ごとに保護できるリスクが全く異なり、誤った選択は保護にならないだけでなく、巻き込まれや感電などの重大災害を招く場合がある。

この記事では、耐切創・耐熱・絶縁・耐薬品・一般の5種類を比較表で整理し、作業別の選び方と「手袋を着けてはいけない場面」を明確にする。保護具全体の選び方は保護具の選び方完全ガイドで解説している。

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作業手袋の種類と特徴|5種類の比較表

まず全体像を表で把握する。手袋の種類・主な素材・保護できるリスク・使用例を一覧にした。

種類主な素材保護できるリスク代表的な使用場面
一般(軍手・作業手袋)綿・ポリエステル軽微な擦り傷・汚れ軽作業・資材運搬・清掃
耐切創HPPE・スチールファイバー・ガラス繊維複合刃物・金属エッジによる切り傷板金・プレス品取り扱い・ガラス・刃物作業
耐熱(溶接用含む)革(牛革・豚革)・アラミド繊維熱・炎・溶接スパッタ溶接・炉前作業・高温部品の取り扱い
絶縁(低圧・高圧)天然ゴム・合成ゴム感電電気設備・配線工事・活線作業
耐薬品(化学防護)ニトリル・ネオプレン・PVC・天然ゴム薬品の浸透・腐食有機溶剤・薬品取り扱い・化学プラント

表は概要整理のための目安です。実際の選定は製品規格・試験値を必ずメーカー資料で確認してください。


耐切創手袋とは|EN388の読み方

耐切創手袋は、刃物や金属のエッジによる切創リスクが高い作業向けの手袋だ。素材にはHPPE(高密度ポリエチレン繊維)やスチールファイバー、ガラス繊維とゴムの複合品などが使われる。

EN388(欧州規格)の切創レベルは、国内製品のカタログでも参照されることが多い目安だ。

カテゴリ試験方法レベルの見方
旧カット試験(Coup試験)回転刃で切断するまでの距離A~F(Fが最高)
新カット試験(ISO13997/TDMスコア)引き切り荷重(N)A~F(Fが最高:35N以上)

2016年のEN388改訂以降、高強度繊維を使った手袋には新試験(TDMスコア)が適用される。製品表示の4桁または5桁の数字・アルファベットの読み方はメーカー資料を参照してほしい。

規格の数値はあくまで目安です。作業内容・刃の種類・使用条件によって実際の保護性能は異なります。


耐熱手袋・溶接用手袋とは|熱源別の素材選び

耐熱手袋は、高温物・炎・溶接スパッタから手を守るための手袋だ。溶接作業では革製の溶接用手袋(溶接手袋・ガントレット)が標準となる。

素材別の特徴

素材耐熱性の目安特徴
牛革約150〜200℃程度耐スパッタ性高・汎用
豚革牛革と同程度柔軟性があり作業しやすい
アラミド繊維(ケブラー系)約300℃以上も対応品あり軽量・長時間作業向け
アルミコーティング輻射熱に対応炉前・鋳造・高熱環境向け

溶接作業の安全全般は溶接作業の安全管理を参照してほしい。


絶縁手袋とは|電圧区分と使い方の注意

絶縁手袋(低圧絶縁手袋・高圧ゴム手袋)は、感電から手を守るための電気用保護手袋だ。日本では労働安全衛生規則により、低圧活線作業・低圧活線近接作業では絶縁用保護具の使用が義務付けられている。

電圧区分の目安(日本の規格 JIS T8117 等を参照)

クラス最大使用電圧(交流)の目安用途例
低圧用(クラス0相当)1,000V以下低圧電気設備・配線工事
高圧用(クラス1〜相当)7,500V〜以上も対応品あり高圧設備・電力工事

絶縁手袋を使う際は以下の点を守る。

  • 外観検査:使用前に亀裂・穴・劣化がないか確認する
  • 空気テスト:手袋を膨らませて空気漏れがないか確認する
  • 革手袋との組み合わせ:機械的損傷を防ぐため、絶縁手袋の上に革手袋を重ねる場合が多い
  • 定期試験:規定期間ごとに耐電圧試験を受ける

絶縁手袋の電圧区分・試験要件は製品ごと・規格改訂で変わります。必ずメーカー仕様書と最新規格を確認してください。

電気作業の安全全般は電気作業の安全管理で詳しく解説している。


耐薬品手袋とは|素材と薬品の相性が重要

耐薬品手袋は、薬品・溶剤の浸透・腐食から手を守るための化学防護手袋だ。重要なのは「手袋の素材と使用する薬品の相性」であり、すべての薬品に対応する万能素材は存在しない。

素材別の対応薬品の目安

素材得意な薬品苦手な薬品
ニトリルゴム石油系溶剤・油脂類ケトン・塩素系溶剤(製品により異なる)
ネオプレン酸・アルカリ・油強酸化剤(製品により異なる)
PVC(塩化ビニル)水溶液系・弱酸・弱アルカリ有機溶剤全般
天然ゴム(ラテックス)水溶液・弱酸・弱アルカリ油脂類・溶剤
積層素材(ButylやVitex等)幅広い薬品に対応高コスト・作業性やや低下

薬品への対応可否はメーカーの「耐薬品性一覧表(パーミエーションデータ)」を必ず確認してください。同じ素材でも製品によって性能は異なります。

有機溶剤を扱う作業については有機溶剤作業の健康障害防止、SDS(安全データシート)の読み方はSDSの読み方ガイドを参照してほしい。


作業別の手袋選定早見表

作業内容から手袋の種類を選ぶ際の目安を整理した。

作業内容推奨手袋注意事項
板金・プレス品取り扱い耐切創(レベルC〜F相当)エッジに応じてレベルを選ぶ
ガラス・刃物作業耐切創(高レベル)手首まで保護するタイプを選ぶ
溶接(アーク・ガス)耐熱・溶接用(革製)スパッタが飛ぶ距離を考慮
電気設備・活線作業絶縁手袋(電圧区分確認)外観検査・空気テスト必須
有機溶剤・薬品取り扱い耐薬品(素材と薬品の相性確認)破損・劣化を毎回確認
軽作業・資材運搬一般作業手袋油がついた場合は滑り注意
回転機械・ドリル・旋盤【着用禁止】巻き込まれ災害の危険(後述)

【重要】回転機械では手袋を着けてはいけない

手袋に関して最も重要な注意事項として、回転する機械・工具を使う作業では手袋を着用してはならない。

グラインダー・ドリル・旋盤・フライス盤などの回転機械を操作する際に手袋を着用すると、布・繊維が回転部に引き込まれて手指ごと巻き込まれる「巻き込まれ事故」が発生する。一瞬の出来事であり、重大な切断・骨折につながる。

巻き込まれ事故が起きやすい作業の例

  • グラインダー(角度グラインダー)使用時
  • ボール盤・電動ドリル使用時
  • 旋盤・フライス盤などの切削加工機械使用時
  • 混合機・撹拌機の操作時

「危ないから手袋で保護する」という発想が逆効果になるのが回転機械だ。手を守りたいなら、回転部に近づけない・接触させないことが大原則となる。詳細はグラインダーの安全についてはグラインダー作業の安全管理を参照してほしい。


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手袋の管理と交換タイミング

正しい手袋を選んでも、劣化した状態では保護性能が発揮されない。日常の管理ポイントを押さえておく。

使用前点検のチェックポイント

  • 穴・亀裂・破れがないか
  • 絶縁手袋は空気テストを実施しているか
  • 耐薬品手袋は薬品による変色・膨潤・硬化がないか
  • 耐切創手袋は糸のほつれ・磨耗が著しくないか

交換の目安

手袋の交換頻度はメーカーが指定する使用期限と、目視点検の結果を組み合わせて判断する。特に絶縁手袋は定期的な耐電圧試験が必要で、試験期限を守ることが法的義務につながる。耐薬品手袋は薬品浸透後に長時間放置すると内部から劣化が進むため、汚染した場合は早めに交換する。


注記: 本記事に記載の規格値・電圧区分・耐薬品性はいずれも目安・参考情報です。実際の選定・使用にあたっては、製品メーカーの仕様書・カタログ、最新のJIS・EN規格、および所轄の法令・指針を必ずご確認ください。


よくある質問

Q. 軍手でいけないの?

軍手(綿手袋)は軽い擦り傷・汚れ防止には有効だが、耐切創・耐熱・絶縁・耐薬品の性能はほぼない。また繊維素材のため、回転機械使用時は巻き込まれ事故の原因になる。作業リスクを特定したうえで、対応する手袋を選ぶことが基本だ。

Q. 1枚の手袋で複数のリスクに対応できる?

「耐切創+耐熱」を組み合わせた製品など、複合性能の手袋も存在する。ただし、感電リスクがある場面では絶縁手袋が必須となり、他の素材で代用はできない。用途を明確にして、まず主要リスクに合った手袋を選ぶのが基本だ。

Q. 絶縁手袋はどこで試験できる?

絶縁手袋(高圧ゴム手袋)の耐電圧試験は、製造メーカー・販売代理店が受付窓口を案内している場合が多い。また労働安全衛生法に基づく試験機関でも受付している。詳細は各自治体の産業安全専門機関や労働局に問い合わせるとよい。

Q. 耐薬品手袋は使い捨てと厚手どちらがいい?

薬品の種類と作業時間で判断する。短時間・少量の薬品取り扱いには薄手のニトリル使い捨て手袋が使いやすい。長時間・高濃度・浸透リスクが高い作業には厚手または積層素材の再使用タイプが適している。SDSの「保護具」欄に推奨素材が記載されていることが多い。

Q. グラインダー作業時に手を守るにはどうすればよい?

グラインダー使用時は手袋禁止が基本だ。手の保護は「回転部に触れない作業方法・段取り」で担保する。具体的には、砥石交換時は電源を抜く・回転が止まるまで触れない・保護カバーを正しく取り付けるといった対策が中心になる。


まとめ

作業手袋の選定は「何を守るか」から逆算することが基本だ。要点をまとめる。

  1. 一般作業手袋は軽作業向け。耐切創・絶縁・耐薬品の代用にはならない
  2. 耐切創手袋は刃物・金属エッジ作業に使用。規格のカットレベルを確認する
  3. 耐熱手袋は熱源・溶接スパッタから保護。素材によって耐熱温度が異なる
  4. 絶縁手袋は電圧区分を確認し、使用前の外観・空気テストを必ず行う
  5. 耐薬品手袋は素材と薬品の相性をパーミエーションデータで確認する
  6. 回転機械(グラインダー・ドリル・旋盤等)では手袋着用禁止。巻き込まれ事故を防ぐ
  7. 手袋は使用前点検と定期交換で性能を維持する

保護具全体の選び方・管理方法の全体像は保護具の選び方完全ガイドで整理している。


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