産業ロボットによる労働災害は、長年にわたり「人間が安全柵の中に入ったとき」に集中して発生してきた。しかし、ここ10年で状況は大きく変わっている。人と隣り合って動く協働ロボット(コラボレーティブロボット、いわゆるコボット)の導入が中堅工場まで広がり、「柵がない=危なくない」という誤解と「柵がない=何でも触ってよい」という油断が同時に増えてきた。本記事では、安衛則第150条の3〜5を起点に、産業ロボットの分類、ISO 10218 / ISO/TS 15066の協働運転要件、安全柵を不要にできる条件、教示・点検・修理時の停止要件まで、工場長・安全担当者が押さえるべき実務ポイントを整理する。
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産業ロボットを巡る事故の実態
産業ロボットによる死亡災害は数こそ多くないが、ひとたび発生すれば致死率が突出して高いことで知られる。厚生労働省「労働災害事例(職場のあんぜんサイト)」には、ロボットの可動範囲内に立ち入った作業者が無人で動き出したアームに激突・挟まれた事例が定期的に登録されている。
典型的な事故パターンは次のとおりだ。
- 教示作業中、教示モード切替の操作ミスにより自動運転モードでアームが動作
- 異常停止したロボットの原因調査のため、安全柵内に入ったところ復帰動作で起動
- 加工物のずれを直そうとして、停止していると思い込んでアーム可動範囲に侵入
- メンテナンス時にロックアウト・タグアウト(LOTO)を行わず、第三者が電源復帰
これらの背景には「設備的隔離」「制御的停止」「管理的手順」の三層がどこかで欠けている共通点がある。協働ロボットの普及により、柵そのものを設けない構成が増えている今こそ、各層の役割を改めて整理する必要がある。
産業ロボットの分類
「協働ロボット」と「産業ロボット」を別物として語る現場は多いが、法令上はどちらも産業ロボットの一形態である。
労働安全衛生規則(以下、安衛則)第36条第31号では、産業ロボットを「マニピュレータ及び記憶装置(可変シーケンス制御装置及び固定シーケンス制御装置を含む。)を有し、記憶装置の情報に基づきマニピュレータの伸縮、屈伸、上下移動、左右移動若しくは旋回の動作又はこれらの複合動作を自動的に行うことができる機械」と定義している。協働ロボットもこの定義に含まれる。
実務上は次の3つの形態に分けて理解しておくと混乱しない。
| 区分 | 特徴 | 代表的な構成 |
|---|---|---|
| 従来型産業ロボット | 高速・高出力。可動範囲を安全柵で隔離 | 自動車組立、大型搬送、スポット溶接 |
| 協働ロボット(Power-Force Limited) | 出力・速度を本質的に制限。人と同空間で運転 | 卓上組立、検査、梱包補助 |
| 産業ロボットの協働運転モード | 通常は安全柵運転だが、特定モードで人と協働 | 双腕ロボット、可搬重量中型機 |
つまり「協働ロボットだから安全柵が要らない」のではなく、「ISO 10218 / ISO/TS 15066に基づくリスクアセスメントの結果、安全柵がなくても許容できると判断できた場合に限り、安全柵を省略できる」というのが正しい理解だ。
安衛則第150条の3〜5を読み解く
産業ロボット周辺作業の安全に関する中心的な条文は、安衛則第150条の3〜第150条の5である。
第150条の3(運転中の危険の防止)
「事業者は、産業用ロボットを運転する場合(教示等のために産業用ロボットを運転する場合及び産業用ロボットの運転中に次条に規定する作業を行わなければならない場合において産業用ロボットを運転するときを除く。)において、当該産業用ロボットに接触することにより労働者に危険が生ずるおそれのあるときは、さく又は囲いを設ける等当該危険を防止するために必要な措置を講じなければならない」と規定する。
ポイントは「さく又は囲いを設ける等」の「等」だ。安全柵以外の方法も、危険を防止できるなら認められる。協働ロボットの「Power-Force Limited運転」によって接触エネルギーが許容範囲内に収まっていれば、安全柵がなくても本条文の要件を満たしうる。
ただし、「許容範囲内」を判断する根拠が必要だ。その根拠を提供するのが後述するISO/TS 15066である。
第150条の4(運転中の作業)
産業ロボットの可動範囲内で運転中に検査・修理・調整等の作業を行う必要がある場合、事業者は次の措置を講じなければならない。
- 産業ロボットの不意の作動による危険・誤操作による危険を防止するための措置を講じる
- 作業中であることを表示する措置を講じる
「不意の作動を防止する措置」とは、具体的にはアームの可動範囲外からの操作、停止スイッチの所持、起動の鍵管理などを指す。
第150条の5(点検等)
産業ロボットの可動範囲内において、教示等または運転中の作業を行うときは、あらかじめ次の事項について点検し、異常があれば直ちに補修その他必要な措置を講じる。
- 外部電線の被覆・外装の損傷の有無
- マニピュレータの作動の異常の有無
- 制動装置・非常停止装置の機能
「いつもの動作確認」を法令上の点検として位置付けているのがこの条文だ。点検を省いて可動範囲内に入った瞬間に災害が発生した場合、事業者責任が問われる。
ISO 10218とISO/TS 15066
産業ロボットの国際的な安全規格体系を整理しておく。日本ではJIS B 8433-1/-2として整合化されており、実質的に国内の安全設計の事実上の標準である。
ISO 10218-1:ロボット本体の安全要件
ISO 10218-1(JIS B 8433-1)は、産業ロボット**本体(マニピュレータと制御装置)**の設計・製造段階での安全要件を定めた規格である。主な要件は次のとおりだ。
- 制御システムの機能安全(カテゴリ、PL:パフォーマンスレベル)
- 非常停止機能(カテゴリ0またはカテゴリ1のいずれかに該当)
- 教示モード時の速度制限(250mm/s以下)
- イネーブルデバイス(ホールド・トゥ・ラン)の要件
- 軸範囲制限装置の要件
これらは主にメーカー側で設計時に組み込まれる要件だが、ユーザー側でも「自社設備が ISO 10218-1適合か」を仕様書で確認しておくと良い。
ISO 10218-2:ロボットシステムとインテグレーションの安全要件
ISO 10218-2(JIS B 8433-2)は、ロボットを含むシステム全体(周辺装置・治具・搬送・人との関係)の安全要件を定める。エンドユーザー(工場側)にとって最も実務的に関わるのがこの規格だ。
- リスクアセスメント手順
- 防護方策の選定(ガード、光線式センサ、レーザスキャナ等)
- 協働運転の4つの方式
- 教示・プログラム検証時の安全要件
ISO/TS 15066:協働ロボットの追加要件
ISO/TS 15066は、ISO 10218-2を補足する技術仕様書で、協働運転に特化した詳細要件を定める。次の4つの協働運転方式が規定されている。
| 協働運転方式 | 主な制御内容 | 想定用途 |
|---|---|---|
| 安全適合監視停止(Safety-rated monitored stop) | 人が協働空間に入るとロボットを停止 | 加工物供給・取出 |
| ハンドガイディング(Hand guiding) | 作業者がロボットを直接押し引きして動かす | 重量物アシスト、教示 |
| 速度・分離監視(Speed and separation monitoring) | 人とロボットの距離に応じて速度を可変 | 検査、組立補助 |
| 動力・力制限(Power and force limiting) | 接触時の力・圧力を許容値以下に制限 | 組立、卓上作業 |
特に4番目の「動力・力制限」では、ISO/TS 15066 Annex Aで身体の各部位(額・目・首・胸・腕など29部位)ごとの接触圧力・力の許容しきい値が数値で示されている。例えば、額部のquasi-static contact(準静的接触)の生体力学的限界は130 N(出典:ISO/TS 15066:2016 Annex A, Table A.2)と規定されている。
協働ロボットの導入時は、メーカーから提示される「衝突力測定データ」が、これらのしきい値以下になっていることを必ず確認すること。
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安全柵を不要にできる条件
「協働ロボットを買ったから柵は要らない」と話す現場をたまに見かけるが、これは大きな誤解だ。安全柵を省略できるのは、リスクアセスメントの結果として「安全柵以外の方策で十分に危険を低減できる」と判断できた場合に限られる。
安全柵不要を成立させる4つの要件
ISO 10218-2 / ISO/TS 15066に基づき、安全柵を省略するために必要な条件を整理すると次の4つに集約される。
- ハザード解析の完了:ロボットおよび周辺装置(エンドエフェクタ、ワーク、搬送機構)について、衝突・挟まれ・吸い込み等の全ハザードを洗い出している
- 接触エネルギーの制限:協働運転方式(特にPower and force limiting)により、最悪条件でも身体への接触エネルギーがISO/TS 15066のしきい値以下に収まっている
- エンドエフェクタとワークのリスク管理:尖った爪、高温の溶接トーチ、回転刃などはそれ自体が独立した危険源として再評価されている
- 協働空間の明示:床面のマーキング・照明・サイン等で「人とロボットが共存する空間」が視覚的に分かるようになっている
よくある落とし穴
- エンドエフェクタの見落とし:本体は協働仕様でも、先端に取り付けたグリッパーや切削工具が独立したハザードを持つ。これを含めた全体評価が必要だ
- 加工物(ワーク)の見落とし:ロボットが運ぶワークが鋭利・高温・重量物の場合、ワーク側のリスクは別途評価が必要
- 「速度を落とせばよい」という安易な発想:速度を落としても、エンドエフェクタの形状や接触面積によっては許容圧力を超えることがある
- メーカー任せの安全評価:協働ロボット本体の安全機能は ISO 10218-1適合だが、自社の設置環境・作業内容を含めたシステム評価(ISO 10218-2)はユーザー側の責任となる
リスクアセスメント文書の整備
安全柵を設けない判断をした場合、その根拠となるリスクアセスメント記録は必ず文書化して保存すること。労働基準監督署の調査や、万一の事故時の事業者責任の証明に直結する書類となる。記録に含めるべき主な項目は次のとおりだ。
- 対象ロボット・エンドエフェクタ・ワークの仕様
- 想定する全ハザード一覧
- 各ハザードのリスク見積もり(重篤度×頻度)
- 採用した防護方策と、その有効性の根拠(ISO/TS 15066のどの要件に基づくか)
- 残留リスクとそれに対する管理的対策
- リスクアセスメント実施者・実施日・承認者
リスクアセスメント手順
産業ロボットおよび協働ロボットのリスクアセスメントは、ISO 12100(機械類の安全性 – 設計の一般原則)の手順を基本として、ISO 10218-2 / ISO/TS 15066の要件を上乗せする形で進める。
ステップ1:機械の仕様と使用状況の特定
- ロボットの可搬重量、最大速度、可動範囲
- エンドエフェクタの形状・温度・回転部の有無
- 想定する全運転モード(自動運転・教示・点検・修理・段取替え)
- 想定する全ユーザー(オペレータ、保全員、清掃員、見学者)
ステップ2:ハザードの同定
産業ロボット周辺で典型的に挙がるハザードは次のとおりだ。
- 接触/衝突:アームの動作との衝突
- 挟まれ:アームと周辺構造物の間、アームとワークの間
- 巻き込み:回転するエンドエフェクタ、搬送機構
- 吸い込み:真空吸着パッドによる皮膚・衣服の吸引
- 切創:鋭利なワーク・エンドエフェクタによる切り傷
- 火傷:溶接トーチ、加熱パッドからの熱
- 電撃:高圧電源・コントローラへの接触
- 騒音:エアブロー、衝撃音
- 環境:レーザ照射、紫外線、ヒューム
ステップ3:リスクの見積もり
各ハザードについて、危害の重篤度と発生確率の組合せでリスクを評価する。代表的な評価軸は次のとおりだ。
- 危害の重篤度:軽傷/治療を要する負傷/重傷・後遺障害/死亡
- 危害発生の確率:暴露頻度・回避可能性・発生事象の確率
ステップ4:リスク低減方策の選定
ISO 12100に従い、次の優先順位で低減方策を選ぶ。
- 本質安全設計:そもそも危険を発生させない(速度・力の制限、危険源の除去)
- 安全防護:安全柵、光線式センサ、レーザスキャナ、両手操作装置
- 使用上の情報:警告表示、取扱説明書、教育訓練
協働ロボットの「Power-Force Limited運転」は、第1段階の本質安全設計に該当する。一方で、レーザスキャナで人の侵入を検知して速度を落とす方式は第2段階の安全防護に属する。
ステップ5:残留リスクの管理
すべてのリスクをゼロにすることはできない。残ったリスクは管理的対策(手順書・教育・保護具)で受容可能なレベルまで下げ、その内容を作業者に周知することが求められる。
教示・修理時の特別教育
産業ロボットに関する特別教育は、安衛則第36条第31号・第32号で規定されている。
第31号:教示等の業務
「産業用ロボット(定格出力が80W以下の駆動用原動機を有する……ものを除く。)の可動範囲内において当該産業用ロボットについて行うマニピュレータの動作の順序、位置若しくは速度の設定、変更若しくは確認(以下「教示等」という。)の業務」が対象だ。
つまり、ロボットを「教える」「動きを確認する」業務に従事する作業者には、特別教育が義務付けられる。
第32号:検査等の業務
「産業用ロボットの可動範囲内において行う当該産業用ロボットの検査、修理若しくは調整(教示等に該当するものを除く。)若しくはこれらの結果の確認の業務」も特別教育の対象だ。
特別教育の科目(標準時間)
労働安全衛生規則別表第3および「産業用ロボットの教示等及び検査等の業務に係る特別教育規程」(昭和58年労働省告示第41号)により、次の科目と時間が定められている。
教示等の業務(合計10時間以上)
| 区分 | 科目 | 時間 |
|---|---|---|
| 学科 | 産業用ロボットに関する知識 | 2時間以上 |
| 学科 | 教示等の作業に関する知識 | 4時間以上 |
| 学科 | 関係法令 | 1時間以上 |
| 実技 | 教示等の作業 | 3時間以上 |
検査等の業務(合計16時間以上)
| 区分 | 科目 | 時間 |
|---|---|---|
| 学科 | 産業用ロボットに関する知識 | 4時間以上 |
| 学科 | 検査等の作業に関する知識 | 4時間以上 |
| 学科 | 関係法令 | 1時間以上 |
| 実技 | 検査等の作業 | 7時間以上 |
80W以下の例外と協働ロボットの扱い
第31号には「定格出力が80W以下の駆動用原動機を有するもの……を除く」という規定がある。卓上型の小型協働ロボットには定格80W以下のモータを使用する製品も存在するが、駆動用原動機の合計出力で判断する必要があり、複数軸の合計でこれを超える場合は特別教育の対象になる。協働ロボットだから特別教育が不要、という思い込みは危険だ。
教育記録の保存
安衛則第38条により、特別教育の記録は3年間保存することが義務付けられている。記録すべき項目は次のとおりだ。
- 教育の種類・科目・時間
- 実施年月日
- 受講者の氏名
- 講師の氏名・資格
停止要件とロックアウト・タグアウト
可動範囲内に立ち入る点検・修理・調整作業では、「停止していること」を物理的・電気的に保証する措置が不可欠だ。
停止のカテゴリ
ISO 13850(非常停止)およびIEC 60204-1(機械類の電気装置)では、停止機能を次の3カテゴリに区分している。
- カテゴリ0:動力を即時遮断する停止(非制御停止)
- カテゴリ1:制御停止後に動力を遮断する停止
- カテゴリ2:動力を遮断せずに制御停止(運転継続が前提)
非常停止ボタンはカテゴリ0またはカテゴリ1のいずれかでなければならない。可動範囲内に立ち入る作業では、カテゴリ2では不十分で、動力遮断(カテゴリ0/1)が前提となる。
ロックアウト・タグアウト(LOTO)
産業ロボットの修理・整備で電源を遮断する場合、第三者が誤って復電させない措置が必要だ。これがロックアウト・タグアウト(LOTO)である。
ロックアウト:電源遮断スイッチに南京錠等を施錠し、物理的に復電できないようにする タグアウト:「作業中・電源投入禁止」を表示する札を取り付ける
複数の作業者が同時に作業する場合は、各自の鍵を1つの多孔ハスプ(ロックアウト・ハスプ)に取り付ける「マルチプル・ロックアウト」を行う。これにより、全員が作業を終えて自分の鍵を外すまで、電源は復帰できない。
残留エネルギーの解放
電源を切っただけでは安全とは限らない。次のような残留エネルギーを意識的に解放することが重要だ。
- 空圧シリンダの残圧(エア抜き)
- 油圧アクチュエータの圧力(圧抜き)
- 重力で落下する可能性のあるアーム(メカニカルストッパで保持)
- コンデンサの蓄電(放電待機時間の確保)
よくある質問
Q. 協働ロボットを導入すれば安全柵は完全に撤去できるのか?
「リスクアセスメントの結果として、安全柵以外の方策で十分にリスクを低減できる」と判断できた場合に限り、撤去できる。具体的には、ISO/TS 15066の協働運転方式(特にPower and force limiting)により、想定される全ての接触シナリオで身体への接触エネルギーが許容しきい値以下に収まっていることをメーカーの試験データ等で証明する必要がある。エンドエフェクタやワーク自体が独立した危険源(鋭利・高温・重量)となる場合は、本体が協働仕様でも追加の防護方策が必要となる。
Q. 教示作業の特別教育は社内で実施してもよいか?
社内実施は可能だが、規程で定められた科目・時間を満たし、講師が教育を行うのに十分な知識・経験を有する必要がある。ロボットメーカーや中央労働災害防止協会、各都道府県の労働基準協会連合会等が実施する外部講習を活用する事業場も多い。教育記録は3年間の保存義務がある(安衛則第38条)。
Q. 協働ロボットの可動範囲内で運転中に作業する場合、安衛則第150条の4は適用されるか?
協働運転であっても、ロボットが運転状態にあり、その可動範囲内で作業を行う以上、安衛則第150条の4の趣旨は適用されると考えるべきだ。具体的には「不意の作動・誤操作による危険を防止する措置」と「作業中の表示」が必要となる。協働ロボットでは「動力・力制限」によって接触エネルギーが本質的に低減されているため、停止せずに作業できるケースが増えているが、その判断はリスクアセスメントの結果に基づいて事業者が責任を持って行う。
Q. 安全柵があるロボットの教示作業中に、別の作業者が誤って柵内に侵入した場合の対策は?
柵の開口部にインターロックを設け、扉が開いた瞬間にロボットが停止する構成が基本だ。教示作業時は教示モードでイネーブルデバイス(ホールド・トゥ・ラン)を握っている間だけアームが動くため、教示者自身が手を放せば停止する。ただし、第三者の侵入を完全に防ぐためには、入口にライトカーテンや安全スキャナを併設するか、教示中の柵入口を物理的にロックする(鍵管理)等の追加対策が必要となる。
Q. ISO 10218 / ISO/TS 15066はJISでも参照できるか?
ISO 10218-1/-2はJIS B 8433-1/-2として整合化されている。ISO/TS 15066は技術仕様書(TS)であり、現時点でJIS整合化された対応文書は存在しないが、メーカーの安全設計や日本国内の事業場でも事実上の参照規格として用いられている。協働ロボット導入時は、メーカーに ISO/TS 15066に基づく試験データの提示を求めることが望ましい。
まとめ
産業ロボット周辺作業の安全管理で必ず押さえるべき3点を再確認する。
-
「協働ロボット=安全柵不要」ではない — 安全柵を省略できるのは、ISO 10218-2 / ISO/TS 15066に基づくリスクアセスメントの結果として「他の方策で十分にリスクを低減できる」と判断できた場合に限られる。エンドエフェクタやワーク自体のハザードまで含めた評価が必要であり、評価結果は文書化して保存する。
-
教示・点検・修理は特別教育を修了した者に限る — 安衛則第36条第31号・第32号により、可動範囲内での教示等および検査等の業務に従事する者には特別教育が義務付けられる。教育記録は3年間保存。「協働ロボットだから不要」という思い込みは、定格出力の判定誤りで法令違反となるリスクがある。
-
可動範囲内に入る作業は停止+LOTOを徹底する — 安衛則第150条の4・5に基づき、運転中の作業では不意の作動防止と作業表示が必須。電源遮断時はロックアウト・タグアウトで第三者の復電を物理的に防ぎ、残圧・残油圧・重力による残留エネルギーも解放する。複数作業者が関わる場合は多孔ハスプによるマルチプル・ロックアウトを採用する。
協働ロボットは、人と機械の境界を消すテクノロジーだ。境界が消えるからこそ、設計段階でのリスクアセスメント、運用段階での教育、点検・修理段階でのエネルギー遮断という三層の規律が、これまで以上に重要になる。「柵がない=危なくない」ではなく、「柵がないからこそ、見えない壁を確実に設計する」という意識が、協働ロボット時代の安全管理の出発点である。
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